「直刀黒漆平文刀拵・附刀唐櫃」は、刃長が223.4cm、総長は270.5cm、もはや、人間が実戦で武器として用いるに適さない長さといえる。つまり、神の姿の大きさや存在の偉大さを具現化するため、人間が扱えない大きさに製作したのかもしれない。その長大な刀身は切刃造り、角棟、かます鋒。生ぶの茎に残る槌目が特長である。1300年を経ているとは思えぬ程の良好な保存状態と、複数の刀身を一つに繋いでいるという技術の高さは注目に値するといえよう。拵えも国宝の名に恥じない意匠に富んだ造りになっている。兜金、山形足金物、責金など金銅製の金具が取り付けられ、石突には透彫りの宝相花唐草文、金具には六花弁の花形飾り、木瓜形の鍔には毛彫りの瑞雲文が刻まれている。これらの拵えは平安時代の作と考えられる。その精緻な造りは、正倉院御物に引けを取るものではないといえるかもしれない。